DOCTORビジネス健康術
一覧へ戻る医師の目から見た「海外旅行を10倍楽しむ」方法
先日、患者さんからこんな相談がありました。
「モンゴルに急に赴任することになったのですが、感染症とか医療体制とかどうでしょう?」
モンゴルの医療、と突然言われても医師としてもビックリします。
格安航空会社(LCC)の日本初就航から約10年。日本人海外旅行客数はついに年間1,500万人越え。
モンゴル赴任、というのはさすがに多くないと思いますが、海外旅行や赴任はすごい勢いで身近なものになってきているといえるでしょう。
モンゴルにせよ、どこにせよ、海外には日本とは異なる「健康トラブル」があります。
事前に海外での「健康トラブル」を知り、海外旅行や赴任を安全で快適なものにする備えが必要です。
海外旅行でよくある健康トラブルの第一位?
海外旅行で最も多いのは下痢です。とくに開発途上国に行く際に圧倒的に多くなります。
出張先でタイトなスケジュールの中、何度もトイレに駆け込むのは仕事の生産性にも影響します。
私も、カンボジア旅行で、2日目の夜から下痢が止まらず、アンコールワットをゆったりと見学するはずが、ホテルのトイレの壁ばかり眺めるはめになってしまいました。
海外旅行中、または帰国後に下痢になることを「旅行者下痢症」といいます。
現地の衛生環境や滞在期間にもよりますが、開発途上国への渡航者の約半数、二人に一人の割合で旅行者下痢症を発症するといわれます。
その80〜90%は細菌性腸炎で、毒素原性大腸菌やカンピロバクターなどが病原菌です。
また、香辛料やアルコールもその原因になりえます。一方、ヨーロッパや北米では、水の硬度のちがいから消化器症状をおこすことがあります。
旅行者下痢症を防ぐために
医師オススメの情報はこちら。厚生労働省検疫所のFORTHホームページ(http://www.forth.go.jp/)や外務省の海外安全対策ページ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/)です。下痢だけでなく多くの旅行に関する健康情報が満載です。
特に、水については、生水を避けて、ボトル入りミネラルウォーター、とくに炭酸水が安全です。
氷は生水がつかわれていることが多く、避けたほうがいいでしょう。
最後に、旅行者の強い味方、「渡航外来」についてご紹介します。
渡航外来とは、海外旅行者のための窓口となる専門外来です。旅行医学に精通した医師が、そのリスクを評価し、個人に合った予防法を提供してくれます。
馴染みがない国に行く際には、まずは渡航外来に“渡航”して下さい。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」
海外旅行の健康リスクを知り、ご自身の体調を事前に整え、安全で快適な旅を楽しんで下さい。

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岩本 修一ハイズ株式会社 人材育成戦略部長
内科医(総合診療医)
Certificate in Travel Health®(国際旅行医学会認定資格)
2008年広島大学医学部医学科卒業。内科医として内科診療や渡航外来、医学教育に従事。医療職に対してコミュニケーション学やEBM、プレゼンテーションの教育に携わる。2016年より現職。




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