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2017.10.12健康術

侮ることなかれ! 意外と知られていないダニの脅威

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前回の蚊よけ対策につづき、今回も生活シーンや海外出張で遭遇しやすい”ダニ”に関連する病気とその予防法についてお伝えします。  


致死的な感染症も! 海外でのダニのリスク

ダニをなめると怖いです。

実は、ダニに噛まれて命を落とすこともあるのです。

ダニ感染症の中で、感染力と致死率が高いのが「クリミア・コンゴ出血熱」(一類感染症※)です。

アフリカや中東、アジア、東欧の一部の地域でこの感染症にかかるリスクがあります。

現時点では治療法も予防ワクチンも確立されてないので、かからないようにすることだけが有効な対応策といえます。

頻度は少ないものの、命に関わるダニ感染症の一つといっていいでしょう。


また、ダニでかかる脳炎もあります。これを「ダニ媒介脳炎」とよびます。

ダニの唾液中に含まれるウイルスが体内に入り、意識障害や神経症状をおこします。

たとえば、森を歩いているときに、木から落ちてきたダニにかまれて発症します。

これまでダニ媒介脳炎は国内でみられることはありませんでしたが、2017年に国内でも発症が確認され、より身近な感染症となってしまいました。


*(注釈)一類感染症とは「感染力や罹患した場合の重篤性などの総合的な観点から極めて危険性が高い感染症」とされ、エボラ出血熱やペストなど7疾患が指定されています。


国内で増加中!? ダニ感染症に注意!  

ダニ媒介脳炎にかぎらず、国内でもダニ感染症の報告が増えています。


次に、国内でかかるダニ感染症をみていきましょう。  

ダニ感染症は地域ごとに分布が異なります。


東日本に比べて西日本で報告が多いのは「日本紅斑熱」と「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」と呼ばれるものです。

日本紅斑熱は2016年に276例で過去最多となりました。

症状は頭痛と熱で始まります。診断されれば抗菌薬で治療します。


一方、SFTSは熱と下痢や腹痛などの消化器症状で始まり、重症例では血小板減少と出血症状をおこします。

2013年に国内初の症例が報告されて以来、毎年50-60例の発症があり、致死率も高いと言われています。

また、北海道では、前述したダニ媒介脳炎が2017年になって初めて報告されています。

今後、報告数がどのくらい増えるか、感染範囲がどれだけ拡大するかが注目されています。


全国的に分布しているのは「ツツガムシ病」です。ツツガムシというダニの一種にかまれて発症し、発疹(皮膚の赤いブツブツ)と肝臓機能の障害をおこします。

2016年は505例が報告されています。


ダニにかまれないための予防法とは?  

ダニ対策の三原則は「行かない・露出しない・ダニよけする」です。

一部のダニ感染症では、有効な治療法が確立していません。

したがって、「かまれない」ことが最善です。


かまれないためにもこの三原則を守って下さい。ダニがいそうな場所には極力「行かない」。

必要以上に森や草むらに入るのは避けましょう。  とはいっても、アウトドアを楽しみたいという方は、「露出しない」を心がけましょう。

具体的には、長袖・長ズボンを着用し、帽子をかぶり、靴を履きます。肌の露出を減らせば減らすほど、ダニにかまれるリスクは下がります。  


そして、覆われていない肌を守るには、ダニよけスプレーが役に立ちます。前回の蚊よけ対策でも紹介しました”DEET”という虫除け成分は「ダニよけ」としても効果的です。

ムシペールα30(DEET 30%)などの、DEET濃度が高いものを選べば効果が十分に持続します。

妊娠している方や小児では添付の説明書を確認して使いましょう。  


なお、ダニ媒介脳炎には予防ワクチンがあるため、海外の流行地域に行く方にはワクチンが勧められてきました。

今後、国内での発症がつづく場合、ワクチン接種も選択肢となるかもしれません。  


アウトドアでの活動や海外旅行や出張をされる方は、ダニ感染症の現状とその予防法を理解し適切に備えましょう。



AUTHOR
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岩本 修一

ハイズ株式会社 人材育成戦略部長
内科医(総合診療医)
Certificate in Travel Health®(国際旅行医学会認定資格)
2008年広島大学医学部医学科卒業。内科医として内科診療や渡航外来、医学教育に従事。医療職に対してコミュニケーション学やEBM、プレゼンテーションの教育に携わる。2016年より現職。

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