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一覧へ戻る旅行者必見!蚊でかかる感染症を防ぐための3つの対策
夏になると蚊に刺されて多くの方が悩まれるのではないでしょうか?日本で蚊に刺されると「かゆみ」が主な問題になりますが、熱帯・亜熱帯地域では日本とは異なる健康リスクがあります。
今回は、蚊でかかる感染症と蚊よけ対策についてお伝えします。
蚊に刺されてかかる感染症は世界で増加
蚊に刺されてかかる2大感染症はデング熱とマラリアです。
デング熱は熱帯・亜熱帯地域では比較的よくかかる病気です。
シンガポール出張の記事でも触れましたが、世界的に増加しており、年間3億9000万人がデングに感染していると推計されています。
デング熱患者の一部は重症化するものの、ほとんどの患者は発熱と関節痛のみで1週間以内によくなります。
一方、マラリアは治療をしなければ致死率の高い感染症です。
マラリアが多い地域は、サブサハラ地域(アフリカのサハラ砂漠より南の地域)とパプアニューギニアです。
その他に、東南アジアや中南米でも発生しています。 これらの他に、蚊に刺されて感染する病気として、黄熱やチクングニア熱、日本脳炎、ウエストナイル熱などがあります。
どうやって蚊よけ対策をすればいい?
蚊よけ対策には3つあります。
「虫よけ剤」、「服装とホテル選び」、「ワクチンと予防薬」の3つです。
まず、虫よけ剤。これは、皮膚につけることで蚊の吸血を避けることができます。
代表的な虫よけ剤はDEET(ディート)です。
第二次大戦中にアメリカ陸軍で開発され、現在、ほとんどの虫よけ剤で主成分として用いられています。
DEETの濃度は高いほど効果持続時間が長くなります。
例えば、12%なら2時間、20%なら4時間の虫除け効果が持続します。
国内ではDEET濃度30%までのものを入手できます。
ただし、DEETはにおいが強いのが難点であり、どうしてもDEETが苦手な方はユーカリ油やピカリジンの使用が勧められます。
虫よけ剤の使用上のポイントは以下の3つです。
1)日焼け止めと併用の際は「日焼け止め→虫よけ剤」の順で使用する
2)室内に戻ったら、せっけんと水で洗う
3)小児に虫よけ剤をつけるときは大人がつける また、妊娠中の方はDEET濃度20%以下のものを選んで使用してください。
小児への使用は年齢によって異なるので、必ず添付の説明書を確認して使いましょう。
次に、「服装とホテル選び」。
服装は「できるだけ肌を露出しない」が基本です。
外出時はできるだけ「長袖・長ズボン・靴」を着用するようにしましょう。
滞在するホテルを選ぶ際には、網戸とエアコンがついていることを予約時に確認しましょう。
筆者が東南アジアであるホテルに泊まった際に、部屋で蚊が大量発生したことがあり、リスクを考えて、すぐに部屋を替えてもらいました。
必要に応じて、部屋替えなどの積極的な交渉も身を守る上で大切です。
最後に、マラリアや日本脳炎、黄熱はワクチンや内服薬による予防ができます。
流行地域への渡航の際、もしくは目的地で流行しているかわからない場合は、旅行の出発までに渡航外来やトラベルクリニックを受診されることをお勧めします。
「たかが蚊、されど蚊」。海外では日本とは異なるリスクがあります。
日本ではかゆみだけだからと侮らず、熱帯地域に行かれる際にはぜひ蚊よけ対策をしましょう。
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岩本 修一
ハイズ株式会社 人材育成戦略部長
内科医(総合診療医)
Certificate in Travel Health®(国際旅行医学会認定資格)
2008年広島大学医学部医学科卒業。内科医として内科診療や渡航外来、医学教育に従事。医療職に対してコミュニケーション学やEBM、プレゼンテーションの教育に携わる。2016年より現職。