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一覧へ戻るデキるビジネスパーソンほど、うつのリスクが高い?
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皆さんは「うつになりやすい性格」といったらどんなものを想像するでしょうか?
様々な研究でうつ病になりやすい性格傾向が提唱されていますが、今日はその中でも有名な「メランコリー親和型性格」というものを紹介します。
「メランコリー親和型性格」とはドイツの精神医学者H.テレンバッハが提唱した概念で、以下の様な特徴があります。
・ルールや秩序を守り、几帳面である
・自分の仕事に対する責任感が非常に強く、完璧主義である
・他者を重んじ、親切・律儀・誠実である ・衝突や摩擦を避けるために、自ら折れることができる
どうですか? これ、職場の「デキる人」の性格そのままなのではないでしょうか?
こうした性格はビジネスパーソンとしてはまさに模範的で、非常に高い評価を得やすい性格傾向であると言えるでしょう。
メランコリー親和型のベースには「秩序志向性」つまり、自分で決めたルールしっかりと守ろうとする、という性質があります。これはビジネスの世界で質の高い仕事をする上では大いにプラスに働きます。
その一方で、厳しい「自分ルール」の中にはまりすぎるために気持ちの切り替えができず、プライベートにも仕事を持ち込んでしまったり、終わっていない仕事があると気になってリラックスができないという弱点もあるのです。
ストレスマネジメントという観点で言うならば以下の様なマイナス面も挙げられます。
・秩序を重んじるあまり変化に弱い
・融通がききにくい
・人に頼れない
・うまく手を抜けない
・他人の評価を気にしすぎる こうした人達は、得てして他人の助けを得ることが苦手だったりします。
(むしろ優秀であるからこそ、大抵の困難を独力で解決できてしまったがために、他者に本気でヘルプを求めることが今まで一度もないケースも多いです。)
たとえキャパシティを大きく超えた業務ストレスが襲いかかってきたとしても、他人からの評価が気になるため、自分自身の心身を休めることを後回しにして限界までがんばってしまい、やがて心身の限界が訪れうつを発症する・・・こうしたパターンが非常に多いのです。
みなさんの周りにも思い当たるフシがあるのではないでしょうか?
さて、このような性格の方がうつにならないためにはどのような対策したらよいでしょうか。
ここでは3つのポイントをあげたいと思います。
① ストレスが溜まりやすい性格であることを自覚する まず自覚する、これがもっとも重要だと思います。
理解することで自分に起こりうる変化が予測でき、それだけで予防効果は大きく高まります。
② 相手の求めるレベルを確認する たとえば書類を提出するにしても、全てにおいて自分の中の100点を目指すのではなく、まず先に「相手が求める成果物のレベル感」を聞いておいて、そこに少しだけ加点するということを心がければ、評価が下がることはありません。
③ 「しょぼい頼みごと」でヘルプの練習をする 究極的にはどんなに大きな困難があっても、他者にヘルプを求めることができれば潰れることはそうそうありません。「援助希求」はビジネスにおいて必須スキルですので、助けを求め慣れていない場合には、信頼できる人に「小さい頼みごと」をすることで、「ヘルプ慣れ」をしていきましょう。
次回も引き続きこのテーマを扱っていきたいと思います。
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。