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一覧へ戻るクラッシャー上司にならないために

以前、「正義の指導」で部下を次々うつに陥らせてしまう、困った「クラッシャー上司」の問題と対策について説明しました。
さて、「自分は100%クラッシャー上司にはならない」と自信をもって言える人はどれくらいいるでしょうか?
クラッシャーの特徴である「『自分は善である』という確信」と「『他人に対する情緒的共感の欠如』による鈍感さ」は、どんな人でも少なからず持ちえるものです。
今回は、自分がうっかりクラッシャーにならないための考え方をご紹介したいと思います。
1)自分の「怒り感情」
「正義感情」に敏感になる もし、自分が怒りっぽくなってきたと感じたら、黄色信号だと考えましょう。
前回「感情型クラッシャー」を説明しましたが、立場の高い人の不機嫌は周囲に非常に大きなストレスを与えます。
また、部下のためを思っての「正義の指導」にも注意が必要です。
実は「正義感情」はとても厄介な感情なのです。
我々は、よくワイドショーで政治家の汚職や芸能人の不倫に正義の怒りを燃やしますが、実は脳科学的には復讐や報復などの正義の執行について考えるときに活性化する部位は、快楽を感じる部位ときわめて近いことが明らかになっています。
つまり、正義感情の本質は快楽であり、これを感じている時には、クラッシャーの本質である「自分は善である」という感情にあふれています。
しかし、そのことに自覚がないと、いたずらに周囲の人間関係を傷つけるおそれがあり危険です。
2)共感的にふるまい、正しく褒める
クラッシャーにならないために必要なのは、①共感的態度を持つことと、②正しく褒めることです。
もしあなたが「人を褒めるのが苦手」だとすれば、これもかなり黄信号かもしれません。
共感的態度とは、たとえば目を見て挨拶したり、声をかけたりなど、相手をちゃんと認識し、気にかけていることが分かる態度をとることです。
小さいことと思うかもしれませんが、これが全く出来ていない上司は、周囲からかなり怖がられている可能性があるのです。
正しく褒めるとは、以下の図のようなプロセスを踏むことです。
とくに、③の「成功を共に喜び、共感する」は難しいかもしれません。
ただ褒めるのではなく、部下の成功を自分ごととして喜び、伝えるということは、褒めるのが苦手な方にはハードルが高いかもしれません。
パワハラやモラハラの概念が市民権を得てきた昨今、自分がかつて上司から受けたのと同じ指導をしていたら、気づかぬうちにクラッシャーになってしまっているかもしれません。
クラッシャーになる人も、クラッシャーの被害に苦しむ人も一人でも少なくなることを切に願っています。
参考文献:「クラッシャー上司 平気で部下を追いつめる人たち」(PHP出版)
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。