DOCTORビジネス健康術
一覧へ戻る知って得する医療に関わるおカネの話 その1

最近は「がんになったら」とか「もしものときに」といったCMをよく目にします。
元気なときには気になりませんが、病気になるとお金も必要となり、誰しも漠然とした不安はあるのではないでしょうか。
自分で備えることは重要ですが、実は知っていると得をする公的制度があるのです。
今回は使い勝手が比較的良い制度をいくつかご紹介しましょう。
高額療養費制度 1か月(1日~月末)に支払った医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超えた金額が健康保険から支給されるといった制度です
図1
具体的には、1か月に100万円の医療費がかかったとしても上限額87,430円を超えて支払った窓口負担額(=ご自身の負担)の21万円が健康保険から返還されるということになります。
加えて、この制度には「世帯合算」、「多数回該当」という対象であれば更にメリットがあるルールもあります。
※上限額は年齢、所得によって異なります。平成29年8月より70歳以上の方の負担金額に変更があります。
世帯合算
ご本人だけでなく同じ健康保険に加入しているご家族の方(健康保険の扶養対象の方)の同一月に窓口で支払った額を合算できるのです。例えば、ご夫婦で病院にかかっていた場合、夫だけの窓口負担では上限額を超えない場合でも妻の窓口負担と合算でき、その額が一定額を超えると、超過部分が高額療養費として支給されるのです。
多数回該当
大きな手術を行った後に抗がん剤治療を行う場合や高額な薬を継続して飲み続けるような場合はどんどんと医療費が膨らんでいきます。
このような時にも役立つ制度があります。それは、高額な医療費が定期的に必要となる場合に自己負担の上限額が下がる制度です。
具体的には、過去12か月以内に3回以上上限額に達していた場合は、4回目以降上限額が引き下げられるのです。
限度額適用認定証
高額な自己負担金を払う余裕がない!という方もおられるかもしれません。実は、そんな悩みをサポートする制度もあるのです。
事前に公的医療保険(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請することで、「限度額適用認定証」の交付を受けると、医療機関の窓口での支払いを上記の上限までで済ませることが出来ます。
通常の高額療養費の請求ですと、請求してから支給されるまでに3か月以上かかりますので、「限度額適用認定証」の利用は大変オススメです。
ここまで読まれて、「そういえば昨年上限額以上医療費を払ったな」とハッとした方、ご安心してください。
高額療養費の支給を受ける権利は診療を受けた翌月から2年間の有効期限があり過去に遡って請求ができるのです。
気になる方はご確認ください。なお、手続き方法はご加入の公的医療保険によって異なりますので、詳細はご加入の保険の窓口にご確認下さい。
※制度の詳細は厚生労働省HPをご確認下さい。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/
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田中 利樹
ハイズ株式会社 医療戦略部長
横浜市立大学附属病院 医療経営アドバイザー
医療管理学修士
2002年明治大学法学部法律学科卒業。商社での勤務を経て医療経営の世界へ。亀田総合病院、聖路加国際病院において、経営企画、人事、人材開発の業務に従事。
2017年より現職。