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一覧へ戻るクラッシャー上司

皆さんは、「クラッシャー上司」という言葉をご存知でしょうか?
気分の浮き沈みが激しく、部下のミスを執拗に責め、暴言を吐き、次々に部下を鬱と休職や退職に追い込むなど、その言動で部下を次々と潰してしまう上司のことを指します。
筑波大学の松崎教授らが提唱した概念です。
最近は、パワハラ、モラハラといった言葉も市民権を得て関心が高まっていますが、なかなか言動に問題のある上司が世の中からいなくなる気配はありませんね(笑)
もし不幸にもクラッシャー上司に遭遇してしまったらどうしたらいいのでしょうか?
今回は、メンタルヘルス視点でクラッシャー上司対策法を考えていきましょう。
クラッシャーの分類
まず、クラッシャー上司は以下のように分類されます(産業カウンセラーの分類)。
干渉型:一切の裁量を認めず完全にコントロール細かいところまで指示するタイプ
感情型:感情の起伏が激しく、周りを振り回すタイプ
乱暴型:とにかく攻撃的で、人格否定的な言動が多く、セクハラやパワハラを常習するタイプ
このようにバリエーションがありますが、実は共通項があるのです。
①「自分は善である」という確信
②「他人に対する情緒的共感」が欠如していることからくる鈍感性
つまり、他人から見てどう考えても行き過ぎているようにみえる言動であっても、本人はまじめに「正義の指導」を行っているつもりなのです。
まずは、これら2つのポイントがクラッシャー上司を理解する上でのポイントとなります。
どう対処すれば?
①まずは「クラッシャー上司」という概念を認識すること
自分が理不尽な言動を受けていると感じた場合、「このアップダウンのパターンは感情型クラッシャーだな」と冷静に認識できると、ストレスを軽減することができます。
ストレスの原因のひとつは「予期の不安」と言われています。
たとえば、ひとりでの海外旅行時に予約していたホテルが取れていなかったことが分かったときは、自分がこの先どうなるか予想がつかない状況に非常に大きなストレスを感じます。
同じく、クラッシャー上司のように、どこで怒り出すかわからない「ツボがわからない人」は周囲にストレスを与えることが多いのです。
つまり、クラッシャーの分類パターンや共通点を理解し「レッテルを張る」ことで、相手の反応を予測することが出来るのです。
したがって、自身が受ける心理的ダメージを軽減することにつながるのです。
②クラッシャーには「点」で戦わない
二つ目のポイントは、クラッシャー上司には決して一人(=点)で戦わないこと。
同じようにクラッシャー被害を被っている仲間と助け合い、点ではなく“面”(=複数)で対処していくことが重要です。
「あのクラッシャーに、今日はこんなこと言われたよ(笑)」と仲間内で共有するだけストレスの軽減になります。
また、機嫌が悪くなる時間帯やキーワードなど、攻略のコツを教え合うのも有効でしょう。
理不尽な説教タイムに入っているときに、被害者をわざと電話で呼び出して救出してあげるなどのチームプレイも使えます。
もしパワハラの域に達する疑いが高いものであれば、すみやかに然るべき対処をチームでとりやすくなります。
よって、第三者と情報や経験を共有しておくことはクラッシャー上司対策としては重要なのです。
次回は、気づかぬうちに自分がクラッシャー上司化しないために抑えておきたいポイントをお話します。
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。