DOCTORビジネス健康術
一覧へ戻る新しい職場のストレスの正体をつかむ①
春になり、そろそろ職場に新しい人が入ってくる季節となってきました。
「新入社員の3割は3年以内に仕事を辞める」と言われて久しいですが、新しい環境に慣れることのストレスは大きく、不安を抱えている方もいるかもしれません。
今回は、そのような新人や新入職者特有のストレスのメカニズムについてお話します。
実力以上の力を出してしまう「四月病」に注意
新しい業務や人間関係の中で適応するためには、人はかなりエネルギーを消費します。
早く信頼を獲得しなければと焦り、自分本来の力以上の頑張りをしてしまうのです。
異文化交流の研究で有名な「リスガードのU字曲線」によれば、人が新しいカルチャーに適応していくためには次のような4つの段階を経ると言われています。
【新しい環境への適応(リスガードのU字曲線)】
(Lysgaard, S. (1955). Adjustment in foreign society: Norwegian Fullbright grantees visiting the United States. International Social Science Bulletin, 7, 45- 51. より引用、一部改変)
【第1段階:ハネムーン期】
環境の変化が新鮮で、何をやっても刺激的で受けて楽しい時期。
本来の力以上に活動的になりがち。
【第2段階:カルチャーショック期】
徐々に慣れてくると同時に、新しい文化の嫌な部分が見えてきて幻滅する時期。
また、それまで蓄積した疲れやストレスが表出して不適応を起こす。
【第3段階:適応期】
言語や新たな環境にも慣れて、徐々にその文化を本当に受け入れることができるようになる時期。
【第4段階:成熟期】
異文化への適応がほぼ完成し、不安やストレスが消失する時期。
さらに新しい変化を受け入れる土壌ができる。
このモデルを踏まえて、私が特に警鐘を鳴らしたいのは4月です。
色々と新しいことがやりたい「ハネムーン期」には、躍起になって本来の自分のキャパシティ以上に活動的になり、勢いに任せて「新しくジムへも通うぞ、英語の勉強も始めてやるぞ」となりがちです。
こういった新しい季節の始まりに付随する、一時的なやる気に伴った行動が「四月病」などと呼ばれたりしています。
当然、本来の力以上が出ているので反動が来て、疲労とモチベーションの低下が起こります。(カルチャーショック期)
その時に、4月に勢いでいろいろと始めてしまった活動が負担になり、にっちもさっちもいかなくなってしまう。
「五月病」というのも実はこのパターンです。
「オレ、来年からいよいよ本気出すから」と周りに宣言している人を見たことはありませんか?
宣言された目標が達成されたのを見たことがないのは、こうしたメカニズムがあるからなんですね(笑)
「環境適応」のストレスを舐めないこと!
一番の問題は、新しい環境変化に慣れることのストレスが甘く見積もられていることにあります。
大切なことはペース配分です。
フルマラソンの最初の100メートルを全力疾走しても仕方ありません。
仕事人生は長く、どんなコースや障害が待ち受けているかわからないので、はやる気持ちをぐっと抑えて、あえて様子見のスロースタートを心がけてみる。
これがストレスマネジメントとして有効な戦略です。
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。