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2017.02.23健康術

「中年の危機」を乗り越えるための4つの試練

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前回は「ミッドライフ・クライシス(中年の危機)」という、40-45歳のビジネスパーソンに起こりやすい心理的葛藤についてご紹介しました。


この重要な転換期を乗り越えて「心身ともに健康でポジティブなミドル」になるために、「キャリア論」的な視点からのお話をご紹介します。


4つの葛藤を乗り越える

心理学者ダニエル・レヴィンソンは以下の4つの葛藤を乗り越えることが必要だと述べています。

葛藤を乗り越えるとは、矛盾する二つの概念を自分の中にうまく共存させていけるようにバランスをとっていくことを意味します。


①「若さ」と「老い」

②「男性性」と「女性性」

③「創造」と「破壊」

④「愛着」と「分離」


少し抽象的ですので具体例を用いて説明していきます。


「若さ」と「老い」のバランス

中年期は体力が衰え、体力や気合いだけで果敢にチャレンジできる年齢ではなくなってきます。

しかし、一方で新しいことに全く挑戦できないほど老いてもいません。

うまく統合すれば、熟練した経験を活かしながら、これまでになかった方向へ挑戦していくと、若さや勢いだけでは到達できないイノベーションを生み出せるかもしれません。


「男性性」と「女性性」のバランス

「男性性」とは、積極性、攻撃性、決断力、リーダーシップなどに代表される「男らしい」特性のことで、逆に「女性性」とは、やさしさ、包容力、柔軟性、共感力などです。

例えば、「オラオラ系」で強引に引っ張ってきたプレイングマネジャーが、自らの不調とパフォーマンス低下をきっかけにマネジャーとして部下の成長を考えるようになり、失敗を許容して柔軟に育成していくようになった、というのは両者がうまくバランスするようになったケースと言えるでしょう。


「破壊」と「創造」のバランス

若いころはこれまで過去の伝統や古い慣習を鋭く攻撃し、破壊することで自らの存在感を発揮してきた人もいろいろなことを経験します。

その過程で「『伝統』や『慣習』の全てが悪なのではない」と態度を軟化し、次の世代のために新しいルールや価値観を創ることを考えるようになった、などというケースが当てはまるでしょう。


「愛着」と「分離」のバランス

「分離」とは、自分の愛着の対象(例えば「会社」や「家族」など)から切り離されたときの自分の姿を想像する、ということです。

今はこの仕事が生きがいだと思っているけれど、この仕事と自分が切り離されたときに、自分に残るものは何か、を考えなければならない時期であるということです。

例えばそれが「子供」であれば、「子離れ」の問題ということになるでしょう。


レビンソンは「『分離』を考えない人の『愛着』は深くない」と看破しています。

自分の大切な存在のために、自分がいなくなった後のことを想像しつつ、そこから切り離されたときの自分の価値や新たなやりがいについても想いを馳せることが必要だということです。

なんと深い洞察でしょうか。


「中年の危機」を越えて

このような葛藤をうまくバランスさせていくことはビジネスパーソン(特に管理職)の人格の成熟に大きく寄与します。

自分を取り巻く様々な環境変化の影響で、これまでの「必勝パターン」一辺倒が通用しなくなった、ということを経験する人のほうが多いでしょう。

そんなときに、これまでの人生を見つめ直し、自分が今まで得意ではなかった部分を育むことで試練を乗り越えることができれば、一皮むけてよりハッピーな中年ライフを満喫することができるでしょう。


参考文献: 金井壽宏 働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書) 2002

「ライフスタイルの心理学」ダニエル・レヴィンソン



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鈴木 裕介

ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。

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