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一覧へ戻るアラフォーの8割が経験する「うつの危機」?
一般的に40代前後はまさに「働き盛り」という印象だと思いますが、実はこのアラフォー世代に起こりやすい心理的な危機があることをご存知でしょうか?
ミッドライフ・クライシス(「中年の危機」)
一般的に40代前後となると、肉体的・精神的・環境的にも様々な変化を経験します。
例えば、肉体的な衰えや子供の成長や親の病気・介護の問題、仕事の面でも職責が変わって管理職になったりするとこれまでの成功体験が通用しない、といった場面を経験します。
公私を通じてさまざまな変化が起こりやすく、「このままの人生でいいのだろうか?」といった漠然とした不安に苛まれやすくなる時期です。
この心理的葛藤を、カナダの精神分析家エリオット・ジャックは「ミッドライフ・クライシス」と名付けました。
正常の中年の80%は「ミッドライフ・クライシス」を経験すると言われており、「今の自分を変える最後のチャンスなのかもしれない」と思うために離婚や転職を考える人も多いようです。
また、誰もが羨むような経歴の持ち主であっても、こうした葛藤を抱えてうつ病を発症したり、アルコールなどの依存症になってしまうケースもあります。一世を風靡した俳優やスポーツ選手が、中年になって犯罪や薬物に手を出したりするのもこの「中年の危機」と無関係ではないかもしれません。
アメリカの高名な心理学者ダニエル・レヴィンソンもその著書『ライフサイクルの心理学』の中で、人生半ばといえる40-45歳を「青年から中年への過渡期」として最重要視しています。
同時にこの試練をうまく乗り越えることで、以降は充実したキャリアを送ることが出来るとも言われています。ポイントは「中年になった」ということをいかにポジティブに受容できるかどうかです。
これまでの自分の人生を見直し、容姿や体力の衰えを素直に受け入れた上で、過去のこだわりや成功体験にすがりつくのではなく、その変化をポジティブに受け入れて「これまでとは違うやり方でチャレンジをしてみよう」という前向き気持ちになれることが重要なのです。
ただ、一般的には、これまで自らが拠り所にしていた「こだわり」や「成功法則」を自ら手放すことの難しさは筆舌しがたいものがあります。それが大きな成功であればあるほど悩ましいものです。
次回は、こうした葛藤に対する対処法についてご紹介します。
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。