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一覧へ戻る実践・愚痴学講座ー「陰性感情」をマネジメントせよ②

前回に引き続いて、仕事上の人間関係の摩擦や衝突によって生じる「陰性感情」(怒り、悲しみ、嫉妬などの感情)とどう向き合い対処していくかについてお話していきます。
今回は効果的な「愚痴の言い方」について解説していきます。
「愚痴は言うな」とは居酒屋の化粧室にも書いてあるような教訓でもあり、日本人は特にグチることに否定的な印象を持っていないのではないかと思います。
しかし、愚痴は医学的根拠を持ったストレス解消法であり、「ツール」として正しく使えば、非常に有用な対処法となります。
ポイントは以下の3つです。
① グチる相手を選ぶこと
② 心の矛盾を素直に表出すること
③ 解決策を求めないこと 詳しく解説していきます。
聞いてくれる相手のポートフォリオを組むのが理想
当然のようですが、愚痴を言う相手は選びましょう。選ぶポイントは「関係の安定性」です。
なるべく仕事上直接利害関係のない人、同性、家族やパートナーではない人がベターだと言われています。
また、毎回同じ人に愚痴を聴かせるのは参ってしまいますので、愚痴や本音を言っても関係が崩れない信頼を持った人をできれば三人以上確保しておくのが理想です。
「尊敬しているけど、ムカつく」—心の矛盾をそのまま表出
愚痴るときに、理路整然とした批判をする必要はありません。
むしろ、プラス評価とマイナス評価が同居していてもいいのです。
その矛盾した感情をそのまま加工せず、表出することが大事です。
例:「忙しい中指導してくれるのは分かるけど、とにかくあの言い方が許せない」
「いいこと言ってくれているのはありがたい。でも、よくわからないのだけどなんか生理的にむっちゃムカつくんだよな」
愚痴る前に「解決策を求めていないこと」を表明しておく
愚痴を言う相手には、あらかじめ問題解決や解決策の提示を求めているのではなく、「信頼しているあなたに、自分の心の中を表出させてほしい」というメッセージを伝えておくのがいいでしょう。
例:「申し訳ないのだけど、今日すごく辛いことがあったから、自分の気持を整理するために、ちょっとだけ聞いてもらってもいいかな。聞いてもらえるだけでいいから。」
重要なのはモニタリングと早期の対処!
陰性感情は心に溜まった負債のようなもので、放置しておくと雪だるま式に膨らみ長期にわたって心を傷つけます。だからこそ、戦略的に早めに対処していくことが肝心です。
苛立ちが募り感情が荒ぶっている時こそ意図的に自分の心を静観し、「今日は嫌なことがあって心に負債が溜まっているから、どこかで精算してから帰宅しよう」などと、早いうちにアウトプットできる環境で吐き出してしまいましょう。
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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。