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一覧へ戻る職場のメンタルケア 実はNGなパターン②
前回に引き続き、職場のメンタルケアの誤解や間違った常識を紹介させていただきます。
「良いアドバイスを与えなくてはいけない」と考え過ぎるのはNG
上司たるもの、部下の問題を解決せねばならぬと意気込み、いろいろ書物を読んで勉強される方も多いようです。
その部下を思う心は素晴らしいのですが、相談者がアドバイスを求めているとは必ずしも限りませんし、むしろしんどい時に「ああしろ、こうしろ」という指導的な態度をとられたり、あれこれ指図されることが逆にツラかったりします。
調べてきた知識や松下幸之助の格言などをつい言いたくなる気持ちをグッと抑えて、まずは相手が何を欲しているのかにフォーカスしましょう。(若手に対し「ありがたい格言」をドヤ顔で言い放つ快感はえもいわれぬものです。響いているかどうかは別として。)
弱っている部下からしてみれば、ただ今の心情を理解して欲しいだけかもしれません。
苦しい時に話を聞いてもらうことだけで心の重さは軽減し、気分が楽になるものです。
まずは最初の5分だけでも、こちらからは一切口を挟まずに相手の意見に耳を傾けてみてください。
原因がわからないケースもある
問題を引き起こした原因が明確にわからない時、我々はとても居心地の悪い気持ちになります。
しかしながら、メンタルヘルスの世界は単純明快ではなく、不調が起こっている本人ですら何が原因なのか全くわからないケースも多々あるということを我々は知っておくべきです。
不確定なものを不確定なままに放っておくのが気持ち悪いからこそ、主観的に「こいつが悪かったんだ」という理由をつけてしまいがちですが、間違った原因に対する解決策ほど組織にダメージを与えるものはありません。
「最後のひと藁」を責めるな
また、『最後のひと藁』という喩え話があります。
丈夫なラクダの背であっても、あまりに重い荷物を背負っていれば、そこにひと藁を積んだ時に背骨は折れてしまうという意味です。
大概、何かトラブルが起こったときは、その直前に起きた出来事を犯人に仕立て集中的に責め立てるのですが、実際は長い間に蓄積してきた藁(負荷)が積み重なってしまったことの方がよっぽど重要であり、その最後のきっかけである1本の藁にこだわるのは本質的ではありません。
責任を感じすぎるのもよくない
自分の担当部署から欠勤多発者やメンタルヘルス不調の人が出たことを、自分の責任のように感じる上司がいますが、実はこの考えが行き過ぎるのはメンタルヘルスのためにはよろしくありません。
こうした考えが過剰になった場合に導き出されるのは、表沙汰になる事例は少ない方が良い、職場内で隠し通せるものならなるべく内密に解決した方がよいという「秘匿的なカルチャー」に繋がります。
起こってしまったことは失敗として認め反省しつつも、そこから学び同じ事態を引き起こさないための礎とする建設的な態度が必要です。
さて、2回にわたって職場のメンタルケアの間違った常識を紹介してきました。
部下や職場を守るために、正しいアプローチを通してメンタルヘルス環境改善につなげていただければ幸いです。

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鈴木 裕介
ハイズ株式会社 事業戦略部長
日本内科学会認定内科医
2008年高知大学医学部卒業。一般内科診療やへき地医療に携わる傍ら、高知県庁内の地域医療支援機構にて広報や医師リクルート戦略、 医療者のメンタルヘルス支援などに従事。2015年より現職。




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